中医の手術を見学させてもらうために朝から病院に行きました。
ウー医師から30分ほどしたら手術を受ける患者さんが来るのでそれまで待合の椅子で座っていてくれとのこと。
その患者さんは日常的に足腰が痛くてびっこを引きながらしか歩けない、50歳代の男性だそうです。
手術自体は昨日見た治療ベッドの並んだ部屋でするそうです。
表に「手術中」と赤いランプのついた手術室でするわけではなかったんですね。
そこに入れるのかと言う期待感もあったので、ちょっと残念と言う気持ちと、反面、それほど大がかりな手術じゃないんだという安心感とが入り混じったような気持ちでした。
まあ、どんな治療にせよ、他人の治療風景を見せてもらえるなんて、日本の病院ではまず考えられないおおらかさですよね。
私が中国人じゃなく、言葉もわからない日本人だから特別だったのかもしれませんが。
しばらくすると、患者の男性が娘さん?に付き添われながらやってきました。
治療台に患者を寝かせて、診察、手術の開始です。
ウー医師は患者の足を持ち上げたり、痛みのツボ?を確認するために指であちこち押したりしながら私に対して言葉とゼスチャーで説明を始めました。
「この人の足は今、ここまでしか曲がらない。そしてこうすると痛みを感じている。これを覚えておいてください。今からの手術でこの症状を治します。実際に見たら怖い手術じゃないと判りますよ。」
そして手術用の手袋をして、、先ほど押しながら目安を付けた臀部の場所に合わせて丸く切り抜いた手術用の布を掛けてから消毒薬のついた脱脂綿で消毒し、そしておもむろに10センチ×20センチくらいの金属製の箱を取り出しました。
中には消毒薬の付いたガーゼに乗せた金属製の細い棒状の道具が4,5本入っていました。
長さは15センチくらい、太さはちょうどボールペンの芯くらいのまっすぐな金属棒です。
そして片側の先端が刃長5mmくらいの彫刻刀の平刃のようになっています。
どうやらこれだけが手術の道具で、この金属棒を患者さんの臀部に刺すようです。
「麻酔は使わないんですか?」と尋ねると、「必要ない。まあ、黙ってじっくり見ていなさい。」とのこと。
そのまま患部にブスッと刺しはじめました。
後で教えてもらい、その時は知らない中国語だったのですが、
手術棒をぐりぐりと探るように動かしつつ刺していきながら
医師:「ここはどんな痛みを感じる?普通の痛みか?ビリッとする痛みか?ツボを押された時の様なズンとした痛みか?」
というのを聞きながら、患者の方も
患者:「そこは普通の痛みだ。そこはちょっとビリッとする。あ~そこはズンとした痛みだ。」
医師:「よし、ココだな!」
といって更にグイッと金属棒を差し込みました。
消毒からこの間、約10分ほど、これで手術は終了です。
後は傷口を消毒して普通のバンドエイドみたいなのを貼って、患者さんにしばらくそのまま寝ている様に言って手術用の手袋を外しました。
しばらくして、最初の診察時と同じ様に患者さんの足を持ち上げたり曲げたりすると、先ほどは少し曲げただけで痛がっていたのですが、かなり大きく曲げられるようになっていました。
そして、来る時にははっきりと判るくらいびっこを引いて歩いて来てたのに、帰りは注意して見なければ判らないくらい自然な歩行で帰っていきました。
医師:「どうです。治るでしょう。痛みも改善していますよね。」
「安心しましたか?もし安心したなら貴方もこの手術を受けますか?」
私:「はい、痛そうだしちょっと怖いけど、私もこの手術を試してみます。」
「手術費用はいくらくらい用意すればいいのですか?」
医師:「では、明後日の朝、手術をしますので来てください。」
「手術費用も安くて、1回75元(当時のレートで約1200円)です。」